第5話
一冊目(虫の音、風の音)
「虫の音、風の音」という本に決めた。
(本をタップし、取り出しましょう。)
本を取り出し、開いた。
瞬間、世界は闇に包まれた。
立っている感覚はある。
世界に光が戻ったとき、あなたは知らない場所にいた。
夜の住宅街。窓の外には田んぼが見える。
???「(今日はやけに静かだよなぁ…)」
少女の声。
???「(毎日毎日うるさい虫が、嘘みたいに静かだよ。)」
???「(まあいいや。集中できる曲でも聴こう。)」
イヤホンをつけてスマホを操作し、音楽を流し始めた。
???「(……あれ、音が聴こえない。イヤホンの電源、ついてる?)」
音が鳴らなかった。
???「(あれ、たしかに接続されてる…)」
???「(……いや、まさかね。)」
風が入ってきた。窓を閉めた。
静かだった。
また暗転した。
恐世「気づきました?」
恐世が現れた。
恐世「虫の音、風の音」は、少女が夜に窓を開けて、様々なことを思う短い話です。
恐世「ですが…」
恐世「違和感に、気づきました?」
恐世「それなら、もう一度確認してみてください。」
恐世「気づきましたか。それは良かったです。」
あなた「全部心の声で、ちゃんとした声はなかった。虫の音や風の音、イヤホンから流れているはずの音楽や、窓を閉める音も。」
あなた「主人公は耳が不自由になったんですか。」
恐世「お見事です。」
微笑みを崩さずに。
恐世「それでは、図書館に戻りましょう。」
暗転が解けたとき、あなたと恐世は図書館にいた。